グラフィックから学ぶ、ワーナー作品

入門編
解説 杉山すぴ豊 アメコミ系 映画ライター

ニコアンドが今夏リコメンドする、ワーナー・ブラザースとのコラボアイテム。映画やアニメのキャラクターがさまざまなタッチでバリエーション豊富に描かれています。せっかく着るなら、作品のことをよく知っておきたいところ。ということで、アメコミ系映画ライターとして活躍する杉山すぴ豊さんにくわしく解説してもらいましょう。

PROFILE

杉山すぴ豊
アメコミ系映画ライター、映画評論家として活動をおこなう。さまざまな雑誌や劇場パンフレット、さらにはアメコミ関連の書籍にて執筆をおこなう。また、映画のプロモーション・プランニングなどもおこなうなど、多岐に渡って活躍している。

SUPERMAN

世界初のスーパーヒーローである『スーパーマン』は、1938年にコミックから登場した作品です。アメリカはヨーロッパやアジアと比べて国の歴史が浅く、ヘラクレスやアーサー王といったいわゆる英雄神話のようなものがない。そうした背景によって生まれたと言われています。だから星条旗に似た色の、とてもシンボリックなキャラクターデザインになっているのでしょう。あとは当時の印刷技術を考えると、綺麗に出る色として青、赤、黄色の原色を使ったということも考えられます。

そうして生まれたスーパーマンが、どのようにして国民的なヒーローとして受け入れられたのか? 彼は惑星クリプトンが滅び、そこから逃れるようにして地球にやってきた。つまり、移民のメタファーでもあるわけです。アメリカも人種のサラダボウルと言われるように、多民族が暮らす国です。だからこそ、このスーパーヒーローがたくさんの人たちに受け入れられたのもうなずけます。

今回のTシャツは過去のポスターアートのひとつを大胆に使っているものですね。パッと見て魅力的だなと思ったのは、スーパーヒーローの普遍的な能力である飛行を表現しているところです。やっぱり、空を飛べるというのは、我々にとってのひとつの夢でもありますからね。

杉山さんおすすめの一本

『スーパーマン』(1978)

最新作もいいですが、やはりクリストファー・リーヴが演じるスーパーマンはとても魅力的。正しく入門と言えるヒーロー映画の王道です。

LOONEY TUNES

アメリカの短編アニメとして、1930年に登場した作品です。もともとはボスコという少年のキャラクターが出ていましたが、次第に動物を描くようになり、はじめにブレイクしたのはポーキー・ピッグでした。それに次ぐようにダフィー・ダック、バッグス・バニーが脚光を浴びていきます。そこから火星からやってきたマービン・ザ・マーシャンが登場するなど、個性豊かなキャラクターたちがたくさん集合しているところが最大の魅力でもあります。

そんな作品のオールスター感が今回のコラボTシャツではよく描かれていると思います。
バックプリントが後ろ姿なのもキャラクターたちが持っている愛嬌がよく感じられていいですね。

さて、こちらの作品は多数のキャラクターたちのドタバタ劇なのですが、相手を嘲笑するような態度とアクションがユニークです。たとえばバッグス・バニーは、自分を捕獲しようとするハンターのエルマー・ファッドを完全になめきっています(笑)。どのキャラクターも自分の好き勝手やって、とにかく行儀が悪く感じられるくらい自由に楽しんでいる。そうした少しブラックさのあるユーモアがこどもたちの心に刺さるポイントなのではないかと個人的には思っています。

杉山さんおすすめの一本

LOONEY TUNES

ルーニー・テューンズは正直どのお話も面白い!気に入ったキャラクターが登場する話を選んでみるなんて言うのはどうでしょうか?

TOM AND JERRY

第二次世界大戦前、アメリカの映画館では短編のアニメ映画がよく放映されていました。そのうちのひとつとしてヒットしたのが『トムとジェリー』で、「ハンナ・バーベラ」というアメリカを代表するプロダクションが1940年に生み出した、いわゆるアイコニックな作品でもあります。

セリフがなくても見ていられるドタバタ劇は、言葉を理解できない小さなこどもでも楽しむことができたし、ネズミを追いかけるネコという構図は、説明がなくとも誰もが理解できるモチーフです。この「追いかけっこ」と言うシチュエーションは、日本のさまざまな漫画やアニメにも影響を与えたと言われています。

そのアニメーションはすごく動的で、キャラクターのアクションがユニークです。たとえば、電気が流れて骨が見えたりとか。そうしたおもしろい動きを、かわいらしいネコとネズミのキャラクターに演じさせているところが魅力的です。

今回のTシャツも、そんなトムとジェリーの説明不要な動的な掛け合いを上手にグラフィックに落とし込んでいるところがいいなぁと思いました。

杉山さんおすすめの一本

『トムとジェリー』(2021)

実写と3Dをミックスし、「トムとジェリー」の世界観を見事に描いた作品。アニメもいいですが、入り口と言う意味であればこちらもおすすめです。

BATMAN

1939年にアメリカンコミックから誕生した『バットマン』。『スーパーマン』が昼に戦うヒーローならば、『バットマン』は夜に戦うヒーローです。そのため、この作品はアメリカンコミックに大人の味わいを与えたとも言われています。では、なぜ夜に戦うのか。それは、戦う相手が犯罪者たちだからです。この作品が生まれた当時は、ニューヨークという都市がどんどん大きくなっていった頃。すると必然的に都市犯罪が増えていく傾向で、それらと戦うヒーローが必要だったという社会的背景も見えてきますね。

作品の主役はコウモリをメタファーにしたバットマンなわけですが、ある意味、悪役として登場する個性豊かなヴィランたちも、この作品のメインキャラクターであるといっても過言ではないでしょう。ジョーカーやリドラーなど、バットマンとは対照的な性格をもち、なおかつ絵的に生えるキャラクターデザインも、とても優れています。

もともとがコミックから誕生した作品であるからこそ、それをTシャツにしたときに、グラフィックがしっかりと活かされます。やっぱり、『バットマン』のアイテムはデザインがとてもクールでかっこいいですね。

杉山さんおすすめの一本

『バットマン ビギンズ』(2005)

ダークなトーンで表現された新しい「はじまりの物語」。リアリティのある人間関係に派手なアクションと「バットマン」の魅力が詰まった1本です。

BATMAN v SUPERMAN

『バットマン』も『スーパーマン』も、どちらも「DC」のキャラクターということで、コミックの中では度々共演を果たしてきました。2016年には映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』が公開され、スーパーマンが活躍するメトロポリスと、バットマンのフィールドであるゴッサム・シティが隣同士にあるということが分かったのは個人的に興味深い事実でした(笑)。

それはさておき、作中では絶対的な能力をもつスーパーマンに対する危惧と、法律を無視して悪人を裁くバットマンの、ヒーロー同士の正義感の相違から生まれるぶつかり合いが描かれました。

映画のキャッチコピーに使用されたのは「世紀の対決」という言葉。今回のTシャツのバックプリントに描かれたのも、まさにそのコピーを象徴するようなグラフィックです。フロントには両ヒーローの胸のマークがグラフィックに落とし込まれ、パッと見ただけでどんな作品なのかが分かる力強さがあると思います。これ以上にシンボリックなマークを持つスーパーヒーローは他にいないのではないでしょうか。

杉山さんおすすめの一本

『バットマン VS スーパーマン
ジャスティスの誕生』(2016)

ヒーロー同士が抱く異なる正義の衝突も見どころですが、超人スーパーマンと天才バットマンによる、パワーVS戦略という戦闘シーンも魅力的です!

すべて税込み価格です。

関連記事

夏の着こなしを楽しく彩る
ワーナー・ブラザースとのコラボアイテム。

Photo_HIROYO KAI [STUH]
Graphic Design(Photo)_MIKIO NISHIHARA [LOKKI]
Text_YUICHIRO TSUJI
Development_EI MATSUDA
Design_HIROAKI TAKATORI
Edit_MASAYA UMIYAMA

Copyright © Adastria Co., Ltd. All rights reserved.
All characters and elements © & ™ WBEI and its affiliates. (s23)